イグサについて

イグサと健康

イグサを構成する栄養成分

イグサには、様々な栄養成分が含まれています。
三大栄養素と呼ばれる糖質、脂肪、たんぱく質。食物繊維、ビタミン、ミネラルも豊富です。
更に、最近注目を集めている抗酸化作用の強いフィトケミカルの一種であるクロロフィルやルテオリンといった機能性物質もたくさん含まれています。

イグサの色について

たたみの黄緑、茶緑色は、眠気を催すほどの安心感を与えると言われています。
この緑の色のもとになっているのはクロロフィルという成分です。
イグサに限らず植物の緑色を代表する色素であり、ポルフィリン骨格にマグネシウムイオンが配位した構造を持っています。
クロロフィルは不安定な化合物であることから、酸性条件下でマグネシウムイオンが解離して黄色のフェオフィチンという物質に変化します。
たたみは年数が経過すると緑色が退色して黄色になっていくのは、クロロフィルが分解するところにあるのです。

イグサの食物繊維

イグサには様々な有効成分が含まれていますが、中でも特筆すべきことは、食物繊維の量が多いということです。
イグサに含まれている食物繊維は、無水物換算で100gあたり63gと、他の食賓と比較してもトップクラスの含有量となっています。
また、イグサに含まれている63gの食物繊維のうち、水溶性食物繊維は3.7g、不溶性食物繊維は59.3gと不溶性食物繊維が大半を占めています。
不溶性食物繊維は、便のカサを増したり、腸を刺激してぜん動運動を活発にしたりして、便通を良くする働きがある栄養素ですので、イグサは便秘を改善する効果も期待出来ます。
食物繊維は、体の中で消化・吸収されない性質があるため、昔は役に立たないとされていましたが、近年では、肥満防止作用、コレステロール値上昇抑制作用、血糖値上昇抑制作用、大腸ガンの発生抑制作用、有害物質の除去作用など、多くの効能を有している事が明らかになり、糖質、脂質、たんぱく質、ビタミン、ミネラルに次ぐ第6の栄養素として体の健康維持に欠かす事の出来ない栄養素として注目を集めています。

イグサを食べる

イグサの食用を考えた時に課題となったのは、「いかに嗜好性を向上させるか」と「どうすれば食べやすくなるか」ということでした。
そこで、イグサにどのような処理を施せばよいかを検証する実験を行いました。
実験の結果、イグサは水煮処理を行うことで、嗜好性を高められることがわかりました。
次に、どのようにすればイグサの繊維を感じさせないかということを考えました。
食品の粘度を上げると、繊維質を感じにくくなります。そのため、アイスクリーム、そうめん、うどんなど、もともと粘性の高い食品と組み合わせることが効果的です。
このようにすれば、食べた時にイグサの繊維質はほとんど感じられず、イグサ独特の爽やかな風味を楽しむことが出来ます。
他にも、お茶や饅頭をなど、様々なイグサ食品が作られるようになりました。
イグサにはこれまで薬草として用いられてきた歴史と、科学的に解明されている機能性を付加価値として、今後も様々な食品が開発されていくでしょう。

イグサの機能性

イグサの弾力性

柔道場では、初心者でも怖がらずに思い切って受け身の練習をすることが出来るように、広く畳が利用されています。
また、畳の弾力性を利用し、足腰のバネと連動させることにより、技のキレを増大出来ます。
イグサはスポンジ構造をしているため、イグサで作られている畳には弾力性があり、フローリングと比べると転倒してもケガが少ないのが特徴です。
また、高齢化社会が進むにつれて、お年寄りが転倒してしまっても、比較的安全性の高い畳の部屋での生活が、快適で安全に暮らす要因にもなります。
さらに、お年寄りと同様に、乳児・幼児にとっても、畳の部屋は重要です。
よく動き回る赤ちゃんたちをケガから守るためにも、弾力性のある畳は安心出来る床材として利用価値が高いのです。

イグサが畳表になるまで

1:泥染め

刈り取りが終わったイグサを染土液に浸し、水切り後に乾燥させます。
染土の粘性による茎表面の保護、色の均一化、吸放湿性に優れる染土で保護膜を作り、調湿機能を持たせる、香気の付与といった効果があります。

2:乾燥

イグサの青々とした緑色が、ポリフェノールオキシターゼ活性の失活による褐色への変化を防ぐため行われます。
収穫時のイグサは約70%が水分であることと、泥染め工程があることから、乾燥は出来るだけ速やかに行います。

3:収納・貯蔵

乾燥後は可能な限り湿気が少なく、そして暗い倉庫や納屋の中で収納することが理想的です。
繊維までにカビがつかないように、細心の注意を払う必要があります。
湿度や光を上手くコントロールすると、2年程度の長期保存が可能になります。

4:選別・製織

イグサの選別は、長いものから順に分けられます。
長いイグサほど品質が良いとされ、熊本産のイグサは135cm以上の長さで最上級品、120cm以上で上級品、110cm以上で中級品、97cm以上で下級品と、明確に区別されています。

5:仕上げ

変色したイグサは製織前に取り除き、茎が径糸に馴染みやすくなるように加湿したあと、製織機で一枚一枚丁寧に織られます。
織りあがったイグサは、水分を11%以下にする「干し上げ」という操作を行ったあと、たたみ床へと縫い付けられます。

イグサの産地

◎石川産:小松表

イグサの表皮が強靭で丈夫なところから人気があり、積雪地方では暖房器具の使用による痛みが少ないことから人気がある。

◎岡山産:備前表

備後のものに比べるとやや太いが、イグサ製品としては良質表として根強い人気がある。伝統の良さがあり、高級品が多い。

◎広島産:備後表

上質たたみ生産県として伝統の良さを伝える特産地。製品は粒が揃い変色に強く耐久性に優れ、最高級品として知られている。

◎福岡産:筑後表

2007年の調査によると、全国2位のシェアを誇る。柔らかく耐久性は少ないが、色合いの良さが普及品として人気。

◎熊本産:肥後表

イグサ生産量の大半を占めている。製品は特選品から標準品まで幅広く、厚く織り込んであるので丈夫なたたみ表と定評がある。

◎高知産:土佐表

高知産畳表は土佐表とも呼ばれています。現在土佐市だけで栽培されており、作付面積は減少していますが、うわもの製品を中心に土佐表ブランドをしっかり守っています。

◎中国産:中国表

中国産の畳表は、近年品質の向上とともに一般住宅用として普及が進み、年間消費量の7割から8割近くを占めるようになって来ています。